アブ・シンベル大神殿放浪記
- in アブ・シンベル
- エジプト
当時の首都だったテーベ(現ルクソール)から南へ500キロも離れた最果ての地に、よくまあ造ったもんだと思ってしまうこの大神殿。正面座像の高さ21メートルは、もちろんエジプト最大。それが4体も座る。岩山をそのまま彫刻し続けて30年間、紀元前1250年頃に完成したそうだ。これを造らせた新王国第19王朝のラムセス2世は「エジプト史上最も偉大なファラオ」と言われており、強い指導力で各地にたくさんの神殿やら施設を造らせたけど、それはとっても自己顕示欲が強いことの裏返しだったりで、過去の王が造った建造物にある碑銘を徹底的に自分のものに書き換えさせた人でもある。そんな彼の人生観が集大成されたものが、自分自身を神格化した巨大像だったわけだ。
左から2体目がいつ頃崩壊したかは不明。落ちた欠片はそのまま足下に残り、何世紀が経過したことやら。移設の際もそのままの状態で移動された。
砂岩なので、よく見ると横方向にうっすら筋模様がある。硬度が高くないためか亀裂はかなり多いし、結構あちこち欠けてたりする。一度サイの目切りにされたから、なおのことだろう。周りには、彼の身内の像や神々の像。周囲の壁面にはたくさんの文字盤のようなものが刻まれている。
実際下まで行くとホントにでかい(写真上)。圧倒されながらも中央の入口から内部に入ってみた。奥行きは63m。入口からほぼ直線で一番奥の突き当たりに御神体がある。
先ず最初が大列柱室と呼ばれる場所。列柱は復活を表すオシリス神の格好をした高さ10メートルのラムセス2世立像を兼ねており、これが計8体。横に1ヶ所通路が広がるが(写真下右)、よく奥は倉庫だったと説明されるものの、実際のところは何に使わたのか、はっきりしたことはいまだに掴めてはいないようだ。
そして列柱の影の壁面全てに記されたのが、強国ヒッタイトとの「カディッシュの戦い」絵巻(写真上)。実際は引き分けに近い結果だったらしいが、勇敢に戦って大勝利しましたと、まるっきり大本営や国防省発表の戦況報告。そしてこういうのが人類の歴史の正体なのだろう。
さて、一番奥にある至聖所に祀られた神像(写真上)に辿り着く。この神殿は、エジプトの国家神プタハ、万能神アメン・ラー、太陽神ラー・ハラクティに捧げられたものと言われるが、ラムセス2世ご本人も仲間にちゃっかり入って計4体が並ぶ。ちなみに右から2体目が「神格化したラムセス2世」だそうで、これまた絶対権力者がやりそうなことだなあと呆れてしまう。しかも、2月22日と10月22日の2日間のみ、この神格化ラムセス2世の顔にだけ光が当たるように神殿自体が造られているわけだから、いやはやまあ、どれだけナルシストなんだろう。
王国の最果てに何故こんなにも巨大な、しかも「神殿」を造ったかは今をもって謎のまま。恐らく一種のランドマークであり、進入しようとする異民族を防ぐために国力を見せつける、いわゆる抑止効果を狙ったもののようだ。だが仮にそうであるなら神殿である必要性に疑問はわく。3000年以上を経ても比較的状態が良いのは、人目につきにくい辺境にあったことと、1812年に発見されるまで、殆どが砂に埋もれていたためだ。近辺は長年に渡って国境紛争なんかがあったりで未調査の土地も多いから、これから新たに謎が解明される可能性も高い。こういう風にエジプトのミステリーはいつまでもつきないから魅力があるのだろう。
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